<ただいま日本酒勉強中>一に麹、二に酛、三に造り。日本酒の醸造方法について

日本酒のこと

今まではただ飲むだけだった日本酒。
でもどうせ飲むなら、少しだけでも詳しくなったほうがお酒を楽しめるかも。
そんな思いでちょっとずつ日本酒についてかじっているところです。

材料は米・米麹・水と大変シンプルながら、細菌や微生物を巧みに使いこなし唯一無二の味わいを生み出す日本酒造り。

その醸造工程は「一に麹、二に酛(もと)、三に造り」といわれるように、大きく3つのパートに分けることができます。

日本酒の醸造工程
  • 約3日
    麹(こうじ)

    精米・洗米/浸漬・蒸米・製麹

  • 約15~30日
    酛(もと)・酒母(しゅぼ)

    生酛・山廃・速醸

  • 約1か月
    醪(もろみ)

    仕込み・発酵・上槽・おり引き/濾過

時間と手間のかかる日本酒造りの醸造工程を、詳しく説明していきます。

醸造工程1: 麹

麹には主に4つの工程があります。

精米

まず、お米の外側を削る精米を行い、お酒にしたときに雑味となりやすいお米の表層部に含まれるたんぱく質や脂質の多い部分を磨き落とします。

扁平精米とは、お米のかたちに合わせて精米する方法。
米の形状に合わせて外側から均等に削ることで、米表面に多く分布されるたんぱく質などの栄養素を効率よく削ることができるんです。

以前の一般的な精米方法では、お米がどんな形をしていても最終的には球状に精米されていたため、場所によって雑味が出やすい部分が残ったままになっていたそう。
しかし扁平精米という新しい技術を取り入れることによって、よりお米本来の旨みを活かした低精米の日本酒が楽しめるようになったといわれています。

精米にかかる時間は精米歩合によって変わってくるようですが、例えば新潟県・朝日酒造の場合、麹米を50%まで磨くまでに約45~50時間もの時間をかけているそうです。

精米歩合70%
白米70%・ぬか30%

本醸造酒は精米歩合70%以下と定められている。

精米歩合50%
白米50%・ぬか50%

大吟醸は精米歩合50%以下と定められている。
クリアな味わいで、お米のコク・旨みが感じられるものが多い。

精米歩合35%
白米35%・ぬか65%

心白が割れやすくなるため、より時間をかけて精米される。
よりコクのある芳醇な旨味になる。

しかしながら、適量のたんぱく質などの栄養素はお米本来の旨みを引き出すともいわれており、精米歩合の数値が小さいとより良質なお酒とは言い切れないところが日本酒の面白いところだと言えそうです。

洗米・浸漬(しんせき)

洗米ではお米を洗い、雑味の原因となるアミノ酸を多く含む糠を落とします。
大吟醸や高級なお酒の場合、機械ではなく手作業で行われることもあるそう(!)。

浸漬は精米で温まったお米を冷やし、水を吸わせる工程。
目指す味わいによって、またその時々のお米のコンディションや気温・湿度などの条件によって、浸漬に必要な時間は変わってくるため、秒単位での作業になるといいます。

浸漬が終わるとお米の中の水分を均一にするため、一晩ほど水切りをします。

蒸米(じょうまい)

蒸米では、甑という器具を使ってお米を蒸します。
100℃近くまで熱した蒸気によって水分がお米の内側に浸透させ

ていきます。

理想の「外硬内軟(外側は硬く、内側は柔らかい状態)」に仕上げますが、それは外硬内軟の状態の蒸米は菌糸が程よく食い込み、よりよい状態の麹が出来上がるからだそう。

ここでのお米の状態が、後の工程&仕上がりのお酒の酒質に大きな影響を与えるということです。

ここで造られた蒸米は、『麹造り』『酒母造り』そして『醪の仕込み』に使用されます。

製麹(せいきく)

お米を蒸した後は、麹米にカビの一種である麹菌(種麹といわれています)をふりかけ2~3日かけて『米麹』をつくります。

日本酒の品質は麹の品質に左右されるともいわれており、作業は麹米の温度や水分などの状態を確認しながら昼夜にわたって行われます。

製麹の流れ
  • 引き込み

    冷やした蒸米を麹菌の繁殖に適した温度・湿度の麹室(こうじむろ)に入れ、温度を均一に保つ

  • 種切り

    蒸米を平たく広げ、種麹を均一に振りかける

  • 床もみ

    麹菌が蒸米に均一に付着するよう、手でお米を揉みこむことで麹米になる

  • 保温

    麹米の湿度を保つため布などで包み、麹菌が繁殖しやすい環境を保つ

  • 切り返し

    数時間後、くっつき固まった麹米を手でほぐし、酸素を取り込ませることで菌の増殖を促す

  • 盛り

    麹米を一定の高さに盛る作業
    こうすることで適度に熱を保つことができ、温度管理を行いやすくなる

  • 仲仕事

    数時間後、一度麹米を出してかき混ぜる
    麹米の温度を調整し、酸素を供給する狙いがある

  • 仕事仕舞

    数時間後、再び麹米を出してかき混ぜて余分な熱・水分を逃がす

  • 出麹

    麹菌の増殖が適切な量になり、目標の品質となったところで、麹室から出す

  • 枯らし

    麹室から出された麹を広げ、余分な水分や熱を逃がすために一晩ほど寝かす

気が遠くなるような、細かい管理と注意が必要な作業。。
しかもまだこれで工程の3分の1までしか終わっていないなんて!

このステップで造られた米麹は、『初添え用米麹』『仲添え用米麹』『留添え用米麹』そして『酒母用米麹』の4つに分けられます。

醸造工程2: 酛(酒母)

この工程では、米麹に蒸米・水を合わせてアルコール発酵を行う『酒母』を培養します。

酵母を繁殖させた酒母を使用することによって、大量のお米をスムーズにアルコール発酵させることができるようになります。

酛(酒母)造り
  • 山おろし

    先のステップ『製麹』で造られた酒母用米麹を使用
    米麹・蒸米・水を混ぜ、お米に麹を付着させ、酛づくりのタンクに移して微生物を繁殖させ、『水麹』を造る

  • 酵母添加

    水麹に蒸米と酵母を投入する
    添加した酵母によって麹菌が分解したブドウ糖からアルコールが生まれる

  • 温度管理を行い、酵母の活動を促す
    約2週間で酒母が出来上がる

3種類の酒母造り

生酛

江戸時代から行われている伝統的な方法。
米麹と蒸米・水を擦り合わせる『山おろし』を行い、お米に麹を付着させます。

山おろしは昼夜を問わず3~4時間間隔で行われます。
この過程で自然界の乳酸菌が取り込まれていき、酒母が酸性になり雑菌の侵入が阻止されるのだそう。

濃厚で酸味とコクのある、すっきりとした味わいが特徴です。

山廃

明治時代に開発された方法。
米麹と水を合わせた水麹に蒸米を混ぜ合わせるので『山おろし』の作業が必要ありません。
生酛と同じく、自然界の乳酸菌が取り込まれていきます。

濃厚な味わいで、香りも豊かなものが多く、野性的で荒々しい味わいになることも。

速醸

米麹、蒸米、水に加えて醸造用の乳酸と酵母も同時に仕込む方法。

『汲みかけ』は麹から溶けた酵素液を米の上からかけて酵素の働きを促す作業です。
生酛・山廃よりも短期間で酒母が出来上がります。

すっきりと飲みやすいお酒が出来上がることが多いです。

酒母完成後は仕込みへ!

醸造工程3: 

ついに最後の工程に入っていきます。

仕込み

醪を大きなタンクに移し、米麹・蒸米・仕込み水を加えて混ぜ合わせた『醪』をつくります。
すべての材料を一度にタンクに入れると酵母菌が薄まりほかの雑菌が繁殖しやすくなってしまうため、3回に分けて酒母の酸性を保ちながら作業する『三段仕込み』が一般的。

醪の甘みを増やすため、掛け米を加える回数を増やす『四段仕込み』などの手法もあります。

仕込みの流れ
  • 初添え

    タンクに酛を入れ、その後に水・米麹・蒸米を分けて入れる
    酵母の増殖を促すために休ませる期間は『踊り』と呼ぶ

  • 仲添え

    十分に酵母が培養されたら初添えの倍程度の仕込み水・米麹・蒸米を加える
    温度管理を徹底し、更に発酵を促す

  • 留添え

    更に中添の倍量の仕込み水・米麹・蒸米を仕込む
    酵母が発酵しやすい環境を保つ

発酵

仕込みのあとは3週間から1か月ほどかけ、醪を発酵させます。

この期間、醪の中では米麹の作用ででんぷんが糖に変化する『糖化』と酒母の働きによって糖分がアルコールに変化する発酵が同時に行われますが、これは並行複発酵と呼ばれています。

  • 水泡(みずあわ):さらりとした泡
  • 岩泡(いわあわ):糖化がすすみ、消えづらい泡
  • 高泡(たかあわ):発酵が最も活発な状態
  • 落泡(おちあわ):アルコールが生成されたことで粘り気がなくなった泡
  • 玉泡(たまあわ):発酵が落ち着き、泡が消えていく
  • 地(じ):泡が消えたら搾りの作業に入る

この間、醪は呼吸するように変化していきます。
泡がこぽ、こぽ、と出てくるのがなんとも面白く、日本酒は生き物なのだと実感する瞬間です。

上槽

発酵によって出来上がった醪を生酒と酒粕に分けていきます。

ヤブタ式の自動圧縮機が主流ですが、醪を酒袋に入れて『槽(ふね)』で搾る方法や、圧力をかけず醪の自重で滴るお酒を集める『袋吊り』などの方法もあります。

搾りのタイミングによる呼び方の違い
  • 開始
    あらばしり

    日本酒の醪を搾る上槽の時に圧縮機から最初に出てきたお酒。
    フレッシュで荒々しいがすっきりとした味が特徴。

  • 上槽
    中取り

    『あらばしり』に続いて出てくるお酒。
    透き通っており、バランスの取れた香りと味が特徴で酒質の良い部分。
    『中垂れ』『中汲み』とも呼ばれる。

  • 終了
    責め

    『中取り』のあと、圧縮機に残った醪にやさしく圧力をかけて搾りきる最後のお酒。
    雑味が多いとされるが芳醇な味わい。
    単体ではなくブレンドして販売されることが多い。

同じ造り、同じタンクで仕込んだ日本酒でも、醪(もろみ)を搾るタイミングによって味わいが異なるのが日本酒らしく面白いところですね。

おり引き・濾過

上槽後は、米の破片や酵母などの固有物や不純物が浮遊しているため10日ほどかけて沈殿させる『おり引き』を行います。

その後、機械や活性炭などで残った粒子を濾過していきます。

火入れ

理想の味になったタイミングで、酵母の働きを止めて品質を安定させるためにお酒を加熱する『火入れ』を行います。
火入れをしない場合、お酒は白濁してくるそう。

プレートヒーターなどに通して熱湯をくぐらせる方法と、瓶詰め後にお湯に入れる瓶殺菌があります。

貯蔵・割水

出来上がったお酒は、香りのバランスや風味が熟成されるまで貯蔵します。

出荷前には利き酒と成分分析・調合や加水などを行い、アルコールや香りのバランスを整えて目指した味への最終調整が行われます。

醪を搾った日本酒は、アルコール度数が高いものだと20%前後になることも。
そこで、一般的には加水を行い、飲みやすくなる15%程度に調整して出荷されることが多いそう。

加水の作業を行わないものは、『原酒』と呼ばれます。

火入れ・瓶詰め

一般的な二回火入れのケースでは、瓶詰め前に再度加熱し殺菌処理を行います。

余談ですが、火入れをするかしないか・するならばそのタイミングによって『生』が付いたり付かなかったりします。ややこしや…

まとめ

今回日本酒の醸造工程を調べてみて、信じられないくらいの手間も時間もかかるステップを経て日本酒が造られていることが分かりました。

中でも、醸造工程の多くでその時々の気温や湿度などを考慮してお酒造りを進めていく必要がある、というのがとっても印象的でした。

日本酒は造るというよりも、『育てる』に近いような過程を経て出来上がるんですね。

上記の醸造工程は一般的なもので、蔵によっては違う方法を採用しているところも多いかもしれません。
でも自分が日本酒を飲むときにそのお酒が造られた工程を想像して味わうと、よりその味わいが深く感じられるような気がします。

それでは、お付き合いいただきありがとうございました!
良い一日をお過ごしください♪

参照:
日本酒の造り方を解説!“米を磨く”工程「精米」 – KUBOTAYA (asahi-shuzo.co.jp)

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