与論島特有のおもてなしである『与論献奉』をご存知ですか?
遠くから訪れた人を歓迎するため、大きな平盃になみなみと注がれた黒糖焼酎島有泉を回し飲みするというものです。

今回は与論滞在中に学んだ、与論献奉のお作法をまとめてみました。
与論献奉

居酒屋のメニューに、このような文言が書かれていました。
与論献奉は、島の永遠の繁栄を念願し
お客様に感謝し、心から歓迎して
町民の誠の心を献上するもので
永禄4年(1561年)から施行された
第1条 | 与論献奉は、与論固有の献奉であり与論島の象徴(誠の心)である。 |
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第2条 | 与論献奉は、全町民の真心を主賓に献上してから関係者全員に施行する。 |
第3条 | 与論献奉は、敵物適量を厳かに1回だけ施行する。 |
第4条 | 与論献奉は、平等に施行し何人たりともこれを断ることはできない。 |
第5条 | 与論献奉施行者は、主賓等の適量を誤ってはいけない。 |
第6条 | 与論献奉施行者は、施行前に趣旨等を口述し味見をしてから施行する。 |
第7条 | 与論献奉受杯者は、献杯する前に自己紹介等スピーチをして献杯する。 |
第8条 | 与論献奉施行中は、何人たりとも離席せず私語を慎み、受杯者のスピーチを拝聴しなければならない。 |
第9条 | 与論献奉施行者は、献奉を終了したら速やかに主催者に報告し、御苦労杯を受け献奉が終了した旨を全員に報告しなければばらない。 |
第10条 | 与論献奉施行者は、献奉施行の一切の権利と義務を負うものをする。 |
与論献奉の進め方

- 平盃に島有泉を注ぐ
- 親(ホスト)が与論来た方々へ感謝の言葉を述べ、自己紹介してから与論献奉の進め方を説明する
- 親が盃の焼酎を全て飲み干す
- 時計回りの順番に親から盃を受け取り、自己紹介をしてから一言述べ、盃の焼酎を全て飲み干す
- 飲み終わったら盃をひっくり返して空になったところを見せ、盃に残った数滴を手にとって頭に撫で付け『とーとぅがなし(ありがとう)』と言う
- 全員に盃が回ると、親が最後の『ご苦労盃』として盃の焼酎を飲み干して終了する
なんでも、最初に親が盃を飲み干すのには毒見の意味があるそう。
元々は薩摩の役人をもてなすために始まったそうで、敵意がないことを示すためにこのようなかたちになったのだと教えていただきました。
お酒が苦手な人は焼酎を注がれている途中で『トォッ!』と言えば止めてくれます。

酔わせるために行う儀式ではないため、無理して飲む必要は全くありません。
水を足したり氷を入れてくれたりするので恐れず親に伝えてみてください。
焼酎に氷を入れた場合は少し長めに話してみるのがおすすめです。
大きな声では言えませんが、氷が溶けてくるのでいい感じに島有泉が薄まるからです。

↑これくらい氷が溶けるまでおしゃべりするのが私の目安でした。笑
まとめ

与論の居酒屋さんで飲んでいるといつの間にか与論献奉が始まり、別々のテーブルで飲んでいたはずの人たちが自然に一つのテーブルに集まって一緒にお酒と食事を楽しむ流れになることが多いのですが、このような背景があったとは驚きです。
居酒屋さんで出会う与論の人は老若男女の別なく旅の人にフレンドリーで気さくに話しかけてくれるので、一人で出かけた筈が最終的にはいいサイズの宴会みたいになるのが面白かったです。
ちなみに私が初めて体験した与論献奉は一周では終わらず、どんどん親が時計回りに移動していって最後には何が起こっているのかわからないくらい何周も回っていました。
私は氷を入れて飲んでいたので致命傷は免れましたが、最後には数人が居酒屋の畳に転がっていたのが印象的でしたw
機会があれば、自分の限度を見極めつつ楽しく参加してみてください。
お酒が全く飲めない方がソフトドリンクで参加していることもありましたよ。
与論献奉は島のお酒を通じて、盃をともにする人々の背景(出身地から始まって、趣味やその他の面白エピソードなど)を知ることができるのが素敵な点です。
また遠方から来た者(私)にしてみれば、島の人々がユーモアを交えて歓迎してくれているのが伝わって嬉しく、とてもいい経験になりました。
それでは、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
素敵な一日をお過ごしください。

ごちそうさまでした!
与論献奉で必ず飲まれる島有泉20度。
すっきりとしながらも黒糖の風味が美味しく、飲みすぎてしまうのです↓
参照:
与論献奉について